「日本国憲法論」の特徴
“佐藤憲法学の集大成”と謳われる佐藤幸治先生の基本書です。佐藤先生の基本書は旧試の定番として人気を博していましたが、本書はそれをリニューアルした現代版であるといえます。
本書は671頁と大ボリュームですが、一冊で人権も統治も網羅されているため、コンパクトであるともいえます。文章は漢語がひしめいており、パッと見ではかなり読解が困難であるようにも思えるのですが、2色刷りのレイアウトも相まって、じっくり読んでみると意外と読みやすいことに気づきます。
基本書としての人気度としては芦部先生の「憲法」より劣るとされていますが、行間まで読み込まないと真の理解が得られない芦部先生の「憲法」よりも、情報がしっかり詰められている本書の方が得るものが多いとの見方もできるでしょう。
特に、統治の情報量は随一であり、なかでも多くの方が苦手とする憲法訴訟の分野が充実しているのは嬉しいところです。
「日本国憲法論」の評価は?
短答式対策において
本書の統治分野の情報量は随一です。短答式試験の統治は皆手薄な分野だと思いますが、本書の統治の部分だけでも読んでおけばかなり自信をもって臨めるのではないかと思います。
人権分野については、さすがに本書ではコストパフォーマンスが良いとは言えないため、判例百選等に時間を割いた方がいいかもしれません。
法科大学院入試対策において
法科大学院入学を目指す法学部生のほとんどにとって、本書はやや難解ではないかと思われます。
本書をすらすら読める方であればもはや法科大学院入試の憲法は心配いらないでしょうが、そうでなければまずは芦部先生の「憲法」や判例百選などで憲法の全体像をしっかり掴むことを目標とされた方が良いでしょう。
司法試験・予備試験対策において
司法試験・予備試験のレベルになると、本書レベルの知識量がほしいところです。演習書や百選を読み込みつつ、辞書代わりに本書を使用すれば大抵の疑問には答えてくれるでしょう。
また、2015年度予備試験のように論文式試験でも統治の分野が出題されることがあるため、安全を期すという意味で、短答式試験と同様統治の分野だけ読んでおくという使い方もアリです。