本書は辰巳専任講師・弁護士の西口竜司先生が受験生の苦手分野であろう共犯と財産犯の中でも詐欺・横領・背任に絞って論点を解説した者です。
本書は一通り刑法の学習は終えたが、論点を問われると具体的に説明出来ない、あるいは論文でうまく書けないといった受験中級者向けのものとなっています。
「西口竜司の論文書き方革命本 刑法 共犯・詐欺横領背任編」の特徴とは?
刑法の論文試験は他の科目と比べ答案作成がしやすく初心者でも書ける、とよく言われますが、司法試験の問題難易度は年々上昇しており、個々の論点の正確な理解が合否を分けます。
本書は刑法分野でも特に受験生が苦手意識を持っているであろう共犯論、詐欺、横領、背任について事案を織り交ぜながら具体的に解説しています。共犯論、詐欺、横領、背任のいずれかに苦手意識を持っている方は本書を手に取る価値は十分あるでしょう。
本書の構成は大きく共犯論と詐欺、横領、背任とで別れています。共犯論部分では共犯と違法性阻却事由や共犯と錯誤の関係といった難解な論点が共犯の処罰根拠に遡って一貫して解説されています。本書を斜め読みするだけでもばらばらに認識していた共犯の論点が理路整然と理解できます。
また詐欺罪等の分野では詐欺罪検討のポイントや横領と背任の区別など試験頻出論点が平易な文章で解説されています。財産犯にアレルギー反応を示す受験生は多いですが、本書を読むことで論点の本質を見極め、得意分野とすることも可能でしょう。
「西口竜司の論文書き方革命本 刑法 共犯・詐欺横領背任編」の評価
短答式対策において
本書は論文の書き方・思考方法に特化したものであり、択一対策には向きません。別途対策を講じましょう。
法科大学院入試対策において
本書は主に司法試験・予備試験の論文対策として作成されたものですが、平易な文章で丁寧に解説されています。まだ勉強を始めてから日が浅い法科大学院受験生にもお勧め出来ます。
また扱っている範囲も入試頻出分野であるものばかりなので本書を読んでおいて損は全くありません。本書で扱っている論点で苦手なものがあれば一読しましょう。
司法試験・予備試験論文対策において
本書は司法試験・予備試験対策として作成されたものであり、苦手な分野があれば一読する価値はあります。もっとも扱っている内容は受験生が苦手な箇所に絞ったものであり、網羅性はありません。論点の総ざらいは別途論証集や基本書で行う必要があります。
またいわゆる受験通説で解説がなされており、細かな学説には立ち入っていないことから刑法の得意な受験生には物足りないです。しかし司法試験を受験する上では本書程度の知識があれば十分なので、受験対策上は不都合内でしょう。
本書は刑法をなんとなくしか理解していない、苦手だ、といった初中級者にぴったりなものです。論文がうまく書けない受験生は是非一読してみてください。