平成27年度大阪大学法科大学院入試、刑法のポイント解説

大阪_27_刑法のサムネ画像です

形式

形式は、甲および乙の罪責に関する事例問題が1題出題されています。解答時間は刑法と刑事訴訟法で90分あります。刑事訴訟法の問題を解く時間を考えると45分以内に解答すべきですので、時間的には余裕はありません。

解答の大枠

本問は、フィリピンパブ事件の判例(最決平4.6.5)を元にした事例問題です。論点が多いので問題となる部分については、その軽重に応じて端的に答えていく必要があるでしょう。

甲と乙との共犯関係の問題であり、実行行為をした者は乙ですので、乙から検討するのが良いでしょう。

乙の罪責について

まず、どの行為が何罪の構成要件に該当するのかについて検討をしなければなりません。乙の行為と生じた結果に着目すると、傷害致死罪の構成要件の検討をすることになります。その際には、死亡結果との因果関係について検討を要します。

次に、乙の行為がVによる暴行を契機になされたものであるため、正当防衛または過剰防衛の正否を検討する必要があります。

甲の罪責について

甲は、乙を介してVに危害を加えることを企図していたことから、乙との共犯関係について検討する必要があります。

そのうえで、共同正犯が成立するとした場合、乙の行為が正当防衛または過剰防衛が成立するとしたときには、共犯の要素従属性の関係で、どう考えるのかという点について検討をすることになります。

論点

乙の罪責について

まず、乙の行為とVの死亡結果との間に因果関係が認められるかが論点となります。判例の立場と言われている危険の現実化の考えからすると、客観的全事情を基礎に当該行為の危険が結果として現実化したといえるかが問題となります。この場合、本人も主治医も気づいてなかった高度の心臓病変という特殊事情も判断の基礎事情に入れて、判断することになるため、因果関係は肯定されるでしょう。

そのうえで、この特殊事情のあるVの死の結果を、責任レベルでも帰責できるか論じることも必要になります。結果的加重犯の成立において、結果についての予見可能性を要求する通説によれば、予見可能性を否定して致死の点について乙は帰責されないということも考えられますが、判例は予見可能性の有無は問題としないので、この立場からすると乙には傷害致死罪の構成要件に該当することになるでしょう(なお、期待可能性について論じる余地はあります)。

次に、乙の行為が正当防衛の要件を満たすかについて検討することになります。フィリピンパブ事件の判例が参考になります。

甲の罪責について

甲は、実行行為をしていませんが、共謀共同正犯を肯定し、教唆との区別基準を正犯意思に求める場合、または重要な役割の有無に求める場合のいずれに立っても、乙と共同正犯が成立すると考えられます。

そこで、甲と乙が共同正犯となることを前提に、乙に過剰防衛が成立すると考えた場合、積極的加害意思を有する甲についても過剰防衛が成立するのかが問題となります。ここでは、要素従属性の問題が共同正犯においても妥当するかという点について自説を述べて、過剰防衛の法的性質との関係でどのように考えるのかを論じる必要があります。

共同正犯においても要素従属性の問題が妥当するという従来の通説の立場からにおいても、急迫不正の侵害の要件をそれぞれの共犯者間で相対的に判断するかが問題となります。

この点について、フィリピンパブ事件の判例の立場で考えると、相対的に判断することになり、積極的加害意思を有する場合には急迫性の要件を欠くとする判例の立場からだと、甲にはこの急迫性要件を欠くことになります。この点について検討したうえで、甲に成立する罪を論じる必要があります。

総評

本問は、因果関係や共犯関係などの基本論点の組み合わせの問題であり、参考とすべき基本判例もあるところです。日頃から基本判例の勉強をきちんとしていることを確認する意味でも良問といえるでしょう。

あなたもレビューしませんか?

※先に「継続力」を理解する事が重要です。

難関な試験に合格する為には独学力を鍛えなくてはなりません。

司法試験の独学力.comでは、独学力を構成する「効率力」と「継続力」。特に独学で司法試験に合格する為の必須条件である「継続力」について解説しモチベーション向上を図ります。