平成28年度京都大学法科大学院入試、刑法のポイント解説

平成28年度刑法_京都のサムネ画像です

形式

出題形式としては予備試験や旧司法試験などに似た、やや短い事例問題形式です。

本年度の刑法も刑事訴訟法と合わせて3時間で検討することが求められています。また内容も異なる事例問題が2問出題されており、法科大学院入試といえど高度な事務処理能力も求められています。もっとも事案自体は素直なものなので、淡々と検討していけばそこまで時間が足りなくなる事はないでしょう。

解答の大枠

第1問では、まず甲が暴漢Xから身を守るためXを殴打し、その後乙が甲に加勢し、結果としてXを死亡させています。そこで甲については正当防衛の成否が、乙については正当防衛の成否と共に、加担前の傷害の結果について帰責されるかが問題となります。甲の正当防衛を検討する際には、乙の加担前後で分けて考えれば分析的に検討することができます。

第2問は甲の単独犯ですが、検討すべき犯罪が多く、高度な事務処理能力が求められます。検討すべき犯罪としては殺人罪、死体遺棄罪、住居侵入罪、窃盗未遂罪、放火罪、窃盗罪などがあげられますが、事案では放火罪の検討に使えそうな事実が多くあることから、やや放火罪を詳しく検討するのが良いでしょう。

論点

第1問

甲はXを殴打し(第1暴行)、傷害を負わせているので傷害罪の構成要件に該当します。もっとも甲はXの暴行から身を守るため右暴行をしているため正当防衛が成立します。したがって違法性が阻却されるので甲はこの行為については罪責を負いません。

次に甲はXのバットを遠くに投げ捨てていますが、乙と共にXに対する反撃行為(第2暴行)を行っています。この点については、Xは素手であり、甲乙は人数的に有利で、一方的に殴り続けています。そこでここは正当防衛の成立を否定し、過剰防衛を認めるのが素直でしょう。結局甲は傷害致死罪が成立し、過剰防衛によって任意的減免の余地があることになります。

乙は甲と共にXに対する暴行を行っています。まずどの時点で傷害の共謀が成立するかを簡単に指摘しましょう。次にX死亡の結果を帰責できるか、承継的共同正犯の可否を検討することとなります。ここは最近判例(最判平24.11.6)が出たところなので、判例を意識した規範を定立できれば印象が良いでしょう。次に乙についても正当防衛が問題となりますが、甲同様過剰防衛とするのが素直でしょう。

第2問

第2問は前述のように検討すべき問題が多くありますが、放火罪以外は簡単に構成要件をあげ、淡々と当てはめていけば良いでしょう。一つ注意が必要なのは本件で借用書を取り戻そうとしたり、100万円をバッグに入れたのはX殺害後なので死者の占有が問題となることです。

次に本題の放火罪ですが、甲は独居老人Xを殺害後に耐火構造を有する508号室に放火していることから現住建造物放火罪・非現住放火罪いずれが成立するのかが問題となります。裁判例(仙台地判昭58.3.28等)は構造上一体でも延焼可能性がない場合には建造物全体に対する公共の危険は生じないとしているので、本問でも他の区画に対する一体性を否定するべきでしょう。

次に焼損の意義が問題となりますが、独立燃焼説(判例)・効用喪失説など自説から論じていけば足りますが、その際にも焼損時期を明確に示すことは必要です。

総評

本問は、検討する事項が多く、じっくり検討している時間はあまりないのかと思われます。認定できる罪を淡々と認定していくべきでしょう。刑事系分野は他の分野に比して判例の立場に立って検討することが求められていると言われているので、まだ自説を決めていない場合には、極力判例の立場に立った検討を行いましょう。

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