「憲法ガール」の特徴
本書は、弁護士である大島義則先生が執筆された憲法の過去問解説書です。元々は著者がブログで連載していたものですが、それが非常に人気を博していたことから書籍化に至りました。
最大の特徴は、司法試験憲法×ライトノベル(ラノベ)という衝撃のコラボレーションです。主人公である大学生の「僕」と、17歳で司法試験に合格した天才少女「トウコ」を初めとする魅力的なキャラクターが送る青春の物語を綴りつつ、がっつりと司法試験の解説をしています。
解説はキャラクター同士の討論という形でなされています。「本気で司法試験を解説する」と著者が述べている通り、他の解説書に比べてかなり深いところまで解説がなされています。また各年度ごとに参考答案がついているのも嬉しいポイントです。
ラノベという形にすることで、難解な司法試験の問題が非常に分かりやすく解きほぐされています。また、ラノベ部分は各話冒頭の2~3頁だけなので、ラノベが嫌いな方でも問題なく読み進められるでしょう。
総ページ数も230頁と少なく、この量で平成18年~24年の司法試験を網羅してくれているため、コンパクトさについても文句なしです。
「憲法ガール」の評価は?
短答式対策において
本書は、論文試験向きの本であるため、短答式対策として直接的な効果はあまり望めません。
しかし、本書は「判例をはしごに」というキーフレーズのもと、憲法判例をどう考えるか、どう使うかということについて多くの示唆を提供してくれているため、判例知識が重要となる短答式試験のための糧になることは間違いありません。
論文式対策において
非常に力になってくれるでしょう。本書は細かいところまで一切妥協せず、「本気で解説」している解説書であるため、答案の書き方だけでなく、議論の運び方、思考過程までしっかりと模範を示してくれています。
本書のキャラクターレベルの議論ができれば、司法試験の憲法は間違いなく圧勝できるでしょう。というより、あまりに高度な議論であるため、そこまで至らなくても十分合格レベルに至ることはできますので「こんな議論書けない・・・」と落ち込む必要はありません。盗めるテクニックはしっかり盗んで、本書を端から端まで利用しつ尽くしましょう。
司法試験対策としてはもちろん、有益なのですが、法科大学院入試や学部試験対策としても用いることができます。本書では、ラノベ形式を取り入れたことにより、他の解説書に比べて圧倒的にわかりやすいものとなっているため、法科大学院受験を控えている大学学部生にも十分おすすめできます。
ただ、やはり題材が司法試験であること、本書で展開される議論のレベルが非常に高度(見た目からはとても想像できないほど高度です)であることから、法科大学院受験レベルではおそらくすべてを理解することは難しいかもしれません。
初めからすべてを理解しようとせず、「司法試験憲法の雰囲気を知りたい」、「憲法のアプローチを知りたい」というくらいの気持ちで、気楽に読んでみることをおすすめします。