山本和彦「倒産処理法入門」の特徴と評価

倒産処理法入門のサムネ画像です

「倒産処理法入門」の特徴

本書は、一橋大学法科大学院の教授である山本和彦先生が執筆された倒産法の基本書です。

ページ数にして292頁と、基本書としてはかなりコンパクトなボリュームとなっています。それにもかかわらず、内容は破産手続・民事再生手続にとどまらず、更生手続、特別清算手続、果ては金融機関の倒産処理や国際倒産にまで触れられています。少ないページ数で倒産法のほとんどの分野を1冊にギュッと詰めたという印象です。

少ないページ数でまとめられているため、判例や関する記述は簡単なものにとどまっています。学説に関する記述にいたってはほとんど言及のないところもあります。

この点は筆者があえてそうしているところであり(初版はしがき)、倒産処理法の全体像をつかむことを目標とするための措置であるといえます。

「倒産処理法入門」の評価は?

本書は、倒産法初学者が入門用に使うべき本であるといえるでしょう。

レイアウトは単色刷りですが、それぞれの記述が簡素であるため、サラッと全体を理解しようとするにあたっては非常に読みやすい本であるといえます。

判例・学説に関する記述が薄いという点についても、判例百選や伊藤先生の「破産法・民事再生法」で十分カバーすることが可能ですし、初学者が初めて倒産法を学習するにあたってはあまり判例・学説の記述が多いものに触れるより、本書のようにサラッと流してくれているもののほうが適切といえるのではないでしょうか(初学者がいきなり伊藤先生の本にあたるのはかなりハードルが高いです)。

また、単に一つ一つの記述が簡素であるというだけでなく、本書の第1章「倒産処理制度の概要」が初学者の興味をグッと引いてくれるような記述になっていたり、随所にコラムを設けて面白い論点を厳選して紹介していたりと、初学者のモチベーションを高めてくれる要素がちりばめられているところが素晴らしいです。

倒産法は、選択科目ということもあって、ある程度他の科目の学習が進んだ人でも初めて出会う分野になるということが多く、「また一から勉強を始めないといけない…」と億劫な気持ちになってしまいがちな科目です。しかし、本書を最初に手に取れば、意外にもスムーズに倒産法の学習をスタートさせることができるのではないでしょうか。

本書で全体の概要を掴み、それから判例百選等の書物にステップアップしていく、というのは一つのモデルとなり得ます。

もちろん、本書だけでは流石に司法試験レベルまで至ることは難しいです。したがって、本書はすでにある程度学習が進んでいる方におすすめできるものとは言えませんが、繰り返し述べる通り、初学者に対しては非常におすすめできる一冊です。

なお、倒産法の有名な概説書としては、他にも「倒産法概説」があります。こちらも倒産法のほとんどの分野をカバーしている点では共通しますが、頁数にして640頁あり、「倒産処理法入門」に比べるとやや重いです。

しかし、そうはいっても伊藤先生の基本書に比べればかなりコンパクトではあるため、「倒産処理法入門」を最初の一冊にするか、「倒産法概説」を最初の一冊にするかはそれぞれの好みで選んでいただいて良いかと思われます。

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