前田雅英「刑法総論講義」の特徴と評価

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「刑法総論講義」の特徴

本書は、旧司法試験の試験委員もなさっていた前田雅英先生による刑法総論の基本書です。

前田先生の特徴は、なんといっても判例・実務を重視するという点にあります。これまで6版まで出版されていますが、版を重ねるごとにその傾向は大きくなり、旧版で展開されていた「自説」が抑えられ、判例ベースの解説に力点が置かれるなど、現在の司法試験にとっても役立つものといえるでしょう。

また、本書は、5版から6版での変更点として、司法試験や予備試験の受験生を意識してコンパクト化された点が挙げられます。

そして、本書の最大の特徴は、実質的犯罪論という立場から書かれているという点です。特に、故意論については、構成要件的故意と責任(要素としての)故意を峻別せず、実質的故意という概念から説明されている点が特徴です。

「刑法総論講義」の評価は?

短答式対策において

コンパクト化されて420ページ程度になった本書ですが、短答知識についても十分にカバーされています。また、判例を重視している本書ですが、学説についても基本書としては多くの図表で整理されているので、短答対策として本書は有用な一冊といえます。

法科大学院入試対策において

上述の通り、本書は実質的犯罪論という立場で書かれており、この立場は必ずしも一般的とはいえません。

本書は結果無価値の立場ですが、判例は一般的に行為無価値の立場といわれており、この点の整合性などを踏まえると、論文で本書の立場を一貫して書くことは難しい部分もあります。そのため、本書の立場で一貫して司法試験にも臨むという場合を除き、法科大学院入試、特に論文対策として本書を利用する必要はないと思われます。

司法試験・予備試験対策において

上述の通り、司法試験・予備試験いずれにおいても、短答対策として本書は役立ちます。また、判例の引用部分が他のものよりも多く、判例の立場を理解するという点では、論文対策としても有効です。

もっとも、前田先生は結果無価値の立場だといわれており、本書も結果無価値に立つものですが、行為無価値といわれる判例の立場との平仄がどう合うのかについて、理解が難しい部分(正当防衛における積極的加害意図の評価など)もあります。6版においてコンパクト化されて、判例の解説に力点が置かれたために、前田先生の「色」がかなり薄くなったことが原因かもしれません。

これは、判例の理解のためには有益ですが、「自説」としてどう論述していくのかという点で悩ましい部分もあります。そのため、短答対策や判例対策としてだけに本書を使うという方法もあります。

ただし、判例の評価については注意が必要です。判例の解説は、大半が調査官解説などの解説と同じですが、なかには一般的な判例の評価と異なる部分(共同正犯における罪名共同に関する最決平17.7.4の評価など)もあります。この点には注意を要します。

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